まるさんの資料置場

本に囲まれ 資料に埋もれ。。。じゃ、紙の削減ね。

寄生木 第12章 (1) 神仏

 明治29年となった。良平も早や数え年の16。父を仙台の未決監に置いて、良平の一家は心細い肩身の狭い籠城の正月を迎えた。

 当の敵長沼一家は如何であったか。村人は御士族衆 (ごおさむらこしゅう  ) に阿 ( おも ) ね諂 ( へつら ) い、その邸を寿ぶく為に、神楽隊を編成して、夜に及んで長沼が中座敷に向かったのである。見物人は山の如く、庭の篝火は真昼の如く燃えて、冬ながら群衆の顔もほてってみえた。襤摟着て縄の帯して般若面をかぶった男が、神楽の鳴物につれて舞った。舞い終わって歌った。

 

  焼けましたよ、焼けましたよ

  長沼の御邸が焼けました。

 

日出度座敷に不吉の此言は、と皆愕然として固唾をのんだ。長沼隠居の麻耶夫人、よろこばざるの色をなした。般若面はまた歌った。

 

  建ちましたよ、建ちましたよ。

  大きなお家が、こんな大きな御家が建ちました。

  こんな立派な御家が建ちました。

と般若は兩手を挙げて幾度か大きな環の形 ( な ) りをした。抑揚ありと頓挫ある般若の所作に皆どっと笑い崩れた。

般若面は愈聲ふりたてて歌った。

  

  こんなに立派な、こんなに大きな御家は、

  この山口の里は愚よ、六十餘州、唐、天竺、

  満竺の果まで尋ねても二つとない。

  どうか年徳神。この御家を常盤に

  堅般に守り玉いて、火難水難盗難のなき様、

  家内安全、息災延命、牛馬繁昌、五穀成