まるさんの資料置場

本に囲まれ 資料に埋もれ。。。じゃ、紙の削減ね。

青眼白眼 題言 齋藤弔花

 題言

吉弘君の「青眼白眼」成る君は奮 ( 古 ) 性に青眼を挹るころを知って奮心に置くことを忘れず、

 君の才は凹凸鏡のことし。物ありて影を落せば、君は一面の彼を捉 ( とら ) ひ來つて正寫、反寫、倒寫し、その八面を觀て、内面を貰ける核心を摑まずば巳まず。

君には一面客観の地に立つの幅員ありて、また一面、直覺に聽くの深處あり。

一物を俎上に置くや、この二個の天才両々相馳駢 ( ちべん ) して、解剖と批判とを生じ來る。その結果を表明するの文字は簡勁 ( かんけい ) にして刃のごとく、やゝ溫情に欠くるかごときころあるも、奇警辛棘は之を補うて餘あり。

 予は近ころ君と膝を交へて縦談するを樂のしむ。而して、對話の主題は、所謂劒氣縦横せる君の評論に非して、山草野花の情話なり。清風光月の閑境なり。

この時にありて君は論士に非すして詩家の醇境 ( じゅんきょう ) に倒れるものといふべき乎。

 君が甚だ人事に興會し、またよく天然に感得し、こゝに矯々うる諭士の面目を見ずして、溫情ふる至人の情趣あるもの、論客としての君は、詩人としての君と君が常に觀察と評論との二面に有して、而も一種の歸着を得るに以て、渾然 ( こんぜん ) 一團の情魂となりて現はる。而して、半面の君は、社會に暴露して、常に健闘の生涯を産み、半面の君は、わづかに親知の間に、潜流して、多恨の人生と繋がる。

 予君に於て交遊日猶浅し、且平生桑麻を是非するに馴れて、人物上下するの才にし。この是非觀のことき恐らく君が一笑に値するもの「青眼白眼」を讀みて、端なく感想を懐に上るものをとつて序文に代ふるのみ。

               磐手村山荘に於て

                                齋藤弔花

 

底本:「青眼白眼」

著:吉弘白眼

出版:吉岡宝文館

出版年月日:1906 ( 明治39 ) 年1月