まるさんの資料置場

本に囲まれ 資料に埋もれ。。。じゃ、紙の削減ね。

太宰治 小山清にあてて

 

昭和16年

 

24 6月18日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 貴稿は拝讀しました。一、二箇所、貴重な描寫がありました。恥じる事はありません。後半、そまつ也。目茶だ。次作を期待してゐます。雰圍氣や匂ひを意識せず、的確といふ事だけを心掛けるといいと思ひます。

( それから、人間は皆、醜態のものですよ )

 

34 7月13日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 拝復

 杉山君と逢つて下さつたさうで、さうして、杉山君が素直な人だつたさうで、何よりと思ひます。義務としてつき合はず、愛情が感ぜられたら、これからも時たま遊んでやるといいと思ひます。私は、ひきつづき齒の治療で、ゆううつです。   不一。

 

44 9月8日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 貴作を讀んだ。ゆるめず、このまま絞つて、くるしいだらうが、少しづつ書きすすめて下さい。いい調子だ。全部出來てから、また、作品の細部にわたつて相談しませう。とにかく、この調子。

 

56 12月2日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 拝啓

 どうして居ますか。毎日、すこしづつでも書いて居りますか。君自身を大事にして下さい。

 信じて。

 成功しなければならぬ。

 別に三鷹へ、わざわざ来なくてもいいから、すこしづつでも書きすすめてゐて下さい。 ( 一日に一行でも )

 

61 12月31日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 拝啓

 お手紙をありがたう。このたびは又、ひどいめに逢つたものだね。でも、御元氣のやうだから安心して居ります。來年は、キツトいい年ですよ。お大事に。當方無事。

                                   不一。

 

昭和17年

4 2月19日

甲府市外湯村温泉 明治屋方より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 拝啓

 けさは、お手紙ありがたう。僕が、旅行に出たあとで、三鷹へおいでになつた由、失禮いたしました。御からだ具合ひもよろしうやうで、ホツと致しました。貴稿は期待してゐます。今年一ぱいでひき上げるつもりですが、歸つたら早速拝見いたします。朝から晩まで仕事 ( 「正義と微笑」 ) で、イヤになりました。こんど、一緒にどこかへ旅行しませう。少しづつまた作品を書いてゐて下さい。

 

7 3月2日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 拝啓

 昨夜おそく歸京いたしました。ただいま、貴稿を拝讀しました。豫想以上といふわけでもなし、また、豫想以下といふ事も決してありませんでした。ところどころに貴重なものが光つてゐて、うごかされました。龜井勝一郎君にたのんで「文學界」に發表できるとよいのですが、近日とにかく龜井君と相談するつもりです。御自愛下さい。                               不一。

( 一週間ばかり家にゐて、また出かけるかも知れませんが、おひまの折には遊びに來給へ。)

 

10 3月13日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 先日は失敬。

 貴稿受け取りました。拝見します。兄の原稿、龜井君は「すこし弱い」と言つてゐましたが、でも、河上徹太郎に見てもらふやうに、龜井君から河上氏に、手渡したさうです、今しばらくお待ち下さい、いづれまた。             不一。

 

34 8月9日

東京府下三鷹下連雀113より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内

 拝啓、ハガキが、ちやうど切れてしまつて、こんなハガキで、失禮おゆるし下さい。先日は、おもてなしも出來ず失禮いたしました。こんどは、ゆつくりして行つて下さい。こんどの作品も、いいものでした。ジャーナリズムは、どたばたいそがしい中で君の作品を静かに鑑賞できないのは無理もないと思ひますが、残念なことです。けれども、必ずいつかは、正當に評價されると思ひます。いまのままで御勉強をつづけて下さい。次作も期待して居ります。まあ、君も、太宰といふ讀者をハツキリとひとり得たのですから、それだけでも、ちひさい成功の一つと信じて下さい。私は十一日頃旅行に出ます。二十日までには歸ります。では、またた。   不一。

 

47 11月29日

甲府市水門町29 石原方より 東京市下谷區龍泉寺町337 讀賣新聞出張所内