まるさんの資料置場

本に囲まれ 資料に埋もれ。。。じゃ、紙の削減ね。

「城の崎にて」について 志賀直哉~創作余談から

城の崎にて」(1917年 大正6年 34歳)


「出来事」を書き上げ、其晩里見弴と芝浦へ涼みに行き、素人相撲を見て帰途、鉄道線路の側を歩いて、どうした事か私は省線に後からはね飛ばされ、甚( ひど )い怪我をした。東京病院に暫く入院し、危( あやふ )い所を助かつた。電車で助かる事を書き上げた日に自分も電車で怪我をし、しかも幸いに一生を得た。此偶然を面白く感じた。此怪我の後の気持ちを書いたのが「城の崎にて」である。

 これも事実ありのままの小説である。鼠の死、蜂の死、ゐもりの死、皆のその時数時間に実際目撃した事だつた。そしてそれから受けた感じは素直に且つ正直に書けたつもりである。所謂心境小説といふものでも余裕から生れた心境ではなかつた。

(昭和3年7月)