まるさんの資料置場

本に囲まれ 資料に埋もれ。。。じゃ、紙の削減ね。

底本

評伝 小山清 1 新吉原 13 八百松楼

加禰の墓誌にある枕橋のほとりの八百松楼とは向島の水神 ( 隅田川神社 ) に隣接した割烹・八百松楼の支店である。前者は枕橋の八百松、後者は水神の八百松と呼ばれていた。水神の八百松は小山松五郎によって開かれた。松五郎は幼少から浅草の八百善で修行し…

評伝 小山清 1 新吉原 10 誕生

小山清は1911(明治44年) 10月4日、父兼次、母つたの次男として新吉原 ( 東京市浅草区千束町2-425 ) に生まれた。兄妹は、兄の新 ( 後に弟・辰、妹・直子 ) がおり、祖父母も健在だった。 私は浅草の新吉原で生れた。生家は廓のはづれの俗に水道尻といふ処に…

滿支一見 ~ 1 宿望  著:里見弴

都会人、――たゞ都会に住んでいるというだけでなく、何代かを或る都市に住みついて來た人間は、兎に角旅を億劫がる傾向があると云ふが、成程さうかも知れない。すぐ思ひつくところで、久保田万太郎君、最近新聞種になった鏑木清方氏の関西遠征の大奮発など、…

岸清一君と偉一君 著:下村海南

「本卦かへり」 四條書房 昭和10年3月20日刊 著:下村海南 體育會館の設立 故岸清一博士の遺志をついて令継偉一君は、體育會館の為に百萬圓を提出されるといふ、近頃快心極まるニュースである。 偉一君から親しく耳にせるところも、委員會にて郷隆君より聞く…

海 「泉鏡花」 著:里見弴

ぼくが少しのこだはりもなく、面と向かつて「先生」と呼べるのはたつた一人、泉鏡花だけです。夏目漱石のことを、「夏目先生」だの「漱石先生」だのと言つた覚えはない。だけど、今日は、だれもかれも公人扱ひとして、尊称や敬語をいつさい省略させてもらは…

古老がつづる 台東区の明治・大正・昭和から 「上野広小路」

上野広小路 斎藤清太郎 台東区上野3-21-10 御成道 ( おなりみち )、上野広小路 これは大正4、5年から10年くらいまでの話になりますか。上野は御成道っていって、将軍が寛永寺にいらっしゃるんですが、それを大事にして、万世橋から上野にかけての御成道が中…

食いしん坊 第6章 (お汁粉と芥川龍之介) 著:小島政二郎

ラジオを有名な七尾怜子、あれの父親は水木京太という劇作家で、三田の学生のころからの親友の一人だった。 これが甘党の両党使いで、辛党の水上龍太郎、久保田万太郎とも付き合えるし、甘党の私とも付き合えるという調法な男だった。それだけに今思うと、両…

「瓢箪新道」 著:吉井勇

春秋社「大東京繁昌記 下町編」1928年9月刊講談社文芸文庫編「大東京繁昌記 下町編」2013年5月10日刊 瓢箪新道 ( ひょうたんしんみち ) というのは、大伝馬町二丁目の南裏通のことをいうのであるが、そこの横丁から一軒の、どこかにまだ文明開化的情調の残っ…

「灰色の月」 著:志賀直哉

底本:自選小説集『雪の日』新潮社1948年(昭和23年11月6日)刊 p.365より 東京驛の屋根のなくなつた歩廊に立つてゐると、風はなかつたが、冷え冷えとし、著て來た一重外套で丁度よかつた。連の二人は先に來た上野まはりに乗り、あとは一人、品川まはりを待つ…

「赤蛙」 著:島木健作

寝つきりに寝つくやうになる少し前に修善寺へ行つた。その頃はもうずゐぶん衰弱してゐたのだが、自分ではまだそれほどとは思つてゐなかつた。少し体を休めれば、ぢきに元気を回復するつもりでゐた。温泉そのものは消極性の自分の病気には却つてわるいので、…

「交尾」 著:梶井基次郎

その一 星空を見上げると、音もしないで何匹も蝙蝠《こうもり》が飛んでいる。その姿は見えないが、瞬間瞬間光を消す星の工合から、気味の悪い畜類の飛んでいるのが感じられるのである。 人びとは寐《ね》静まっている。――私の立っているのは、半ば朽ちかけ…

「うで玉子」 著:里見弴

初出 1925年 ( 大正14 ) 5月「新小説臨時増刊 天才泉鏡花号」同年 12月18日「縁談窶」改造社に所収 花にはざつと半月早い3月20日がらみのこと、仰向に、寝床のなかで擴げてゐた新聞に、印度から像使ひが來たとて、頭に厚く布 (きれ) を巻いた、光つた顔の寫…

「遠方からみた谷崎君」 著:里見弴

初出 『新潮』1924年 ( 大正13 ) 2月号『自然解』1934年 ( 昭和9 ) 8月28日 新小説社刊 谷崎君とは、随分古くから面識があるが、今日まで遂に深い交際はした事がない。それはただ、機会がそうさせたのだというよりも、幾分谷崎君の性格から来ている事のよう…

「梅龍の話」 著:小山内薫

底本:日本現代文學全集34 岡本綺堂・小山内薫・眞山青果集講談社 1968(昭和43)年6月19日発行 初出:中央公論 1911(明治44)年12月 著 (つ) いた晩はどうもなかつたの。繪端書屋の女の子が、あたしのお煎餅を泥坊したのよ。それをあたしがめつけたんで大…